コンコーネの主題による7つの祈り 上梓しました

 

序文より

新型コロナウイルスのパンデミックが宣言されて7か月。いまだ出口が見えない閉塞感のなか、合唱界はこの機を個人の技量のアップに、と唱えています。でも何をどうしたらいいのか・・・との困惑の声も聞こえます。              
そこで、声楽のバイブル的な教則本であるコンコーネ50番前半のから数曲を同声三部合唱に編曲し、加えて母音唱法だけだとにつまらない、と言われないために、カトリック教会での典礼文や祈祷文、聖歌などから、よく知られるラテン語のテキストをあてはめて、コンコーネの主題による「7つの祈りの歌」を上梓いたしました。         
「ケン、あまり驚かさないでちょうだい」と天国から畑中良輔先生のお声が聞こえてきそうです。コンコーネを日本の声楽界にもたらした先生・・・。学生時代から親しくお言葉を交わしてくださった私の師でもあります。合唱界にとって一隅を照らす作品になりうると願い、先生にはお許しを請うしかありません。             
私達はコロナ感染症の恐怖に脅え、何にもできない己を思い知りました。そして仲間に囲まれて音楽できることが、いかに深い恵みであったことかも知りました。                      
この小品集が、皆様に歌うことの喜びを呼び覚まし、新たな生きる活力となりますならば、この上ない喜びです。 

各曲について

全音楽譜出版社のコンコーネ50番の巻頭には、畑中良輔先生による声楽的アプローチと習得すべきテクニックが1曲ごとに細かく記述されています。是非ともご一読ください。            

◎ 各曲のラテン語テキストについて                
Vocalise (concone No.1) ………Giuseppe Gioacchino Conconeさんと畑中先生に心からの畏敬の念を込めて、第一曲目だけは本来のVocalise(母音唱法)としました。

Ave Maria (concone No.4) ………このやさしさに満ちたメロディーを口ずさむと、マリア様の慈しみ、恵みあふれる喜び、そして、あたたかな眼差しが重なるのです。(曲中のChristeは編曲者による挿入です。)

Gloria (concone No.10) ………2小節単位のフレーズが4回繰り返されていることから、グレゴリオ聖歌の先唱に続く主を賛美する4句を配することができました。

Et incarnatus est (concone No.6) ………前半の短調では、キリストの生誕の奇跡と受難の痛みを、後半の長調では復活という構成です。「三日目に甦り・・」が三拍子というのも気に入っています。          

Laudate Dominum (concone No.5) …………MozartのVespereからのインスピレーションです。コンコーネの牧歌的なのどかな曲調に触れると、穏やかな気持ちで心を満たされ、慈しみと恵みを覚えるのです。     

Libera me (concone No.14) ……Faure のレクイエムでは静寂ですが、オリジナルのダイナミックな曲調をいかして、直接的な希求(コロナ禍からの解放)を表現しようと仕上げました。                

Sanctus (concone No.8) ……心に平安を覚えるこのメロディーの特性に、SanctusのHosanaに続いて、Benedictusも歌う構想が浮かびました。困難な時を共に歩んでくださる方々に向けて「感謝」を歌ってくださいますように。